数学科教育論

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日本大学理工学部 山本修一


授業のテーマ


グラフで見る微分方程式の差分近似


<この授業のねらい>

y'+y=0 や y''+y=0 のように、導関数 y'=y'(x) や2次導関数 y''=y''(x) などを含む式を微分方程式という. 特に ux(x,y) のような偏導関数を 含む式の場合,偏微分方程式と呼ばれる.
微分方程式を差分という量で近似すると,微分方程式に 対応する差分方程式が得られる. 差分方程式が示す関係を知ることにより, 与えられた微分方程式の意味を学ぶことができる. 現象から導かれる微分方程式の例を通して, 自然界の動きが微分方程式と密接な関係にあることを 理解する.



 I  自然界の動きと三角関数


三角関数は高校で学ぶ数学のなかで重要な内容になっています. まず,バネの動きと三角関数の関係を考えましょう.
バネの先に重りをつけて、摩擦のない水平面上を自由に運動させる. バネの先の重りを伸び縮みしていない平衡位置 x=0 から少しずらして x=1 で そっと放すと、物体は往復運動を始める. t 時間後のこの重りの位置を x(t) とすると, x(t) は どのように変化するでしょうか.

(1) バネは最初, このようになっています.

(2) x=1 まで,ずらしてそっと放すとバネの先にある重りは このような動きをします.

この動きを観察するために MathReader を起動し,実行ファイル demo.nb を開きます. (file メニューで open をクリックして demo.nb を選択).次に最初の図形をクリックすると線で囲まれるますが、 引き続きダブルクリックしてください.
(注意) 実行ファイル demo.nb が C ドライブのフォルダー MathReader に保存していない場合は ここをクリックして手に入れてください.


えっ!  バネの先の重りの動きは三角関数で表現できる ?


(3) 理由を考えてみましょう。

ニュートンの運動方程式とフックの法則より x(t) は微分方程式

x''(t)+k/m x(t)=0

を満たすことがわかる (物理を学習すれば). ここで k はバネ係数,m は重りの質量.

上の式は 定数係数の 2 階線形微分方程式と呼ばれる. この関係式を満たす関数 x=x(t) を解といい, それを見つけることを微分方程式を解くという.


以後,簡単のため,k/m=1 とします.

上のバネの先にある重りの動きは,離す位置が x=1 だから x(0)=1 . そっと放すので x'(0)=0 (初速度は 0) を満たす解 x(t) に従う.このような解は

x(t)=cos t

であることが今まで学んだ三角関数の微分法からわかる.


(4)動きを観察する.

例えば,大きな自然数 n に対して, 時間を t=0/n, 1/n, 2/n, 3/n, ... のように表して,この値を x(t)に代入して

x(0/n), x(1/n), x(2/n), x(3/n), ...

の位置を順に観察していくことによりバネの先にある重りの動きを知ることができる.

この動きを観察するために MathReader を起動し,実行ファイル lesson1.nb を開きます. (file メニューで open をクリックして lesson1.nb を選択).
(注意) 実行ファイル lesson1.nb が C ドライブのフォルダー MathReader に保存していない場合は ここをクリックして手に入れてください.


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